鉄筋コンクリート部材の長期曲げひび割れ幅を制御するための基礎資料とすべく次の各項目の調査を行った。 1.長期曲げ載荷を受けた鉄筋コンクリート曲げ部材のひび割れ挙動。 5年間に亘る長期曲げ載荷を行った鉄筋コンクリートはり部材について静的載荷を行い、長期載荷がひび割れ挙動を含む部材の曲げ性状に及ぼす影響を実験的に調査した。 2.異形鉄筋による長期ひび割れ制御特性。 ひび割れ幅の制御のために異形鉄筋を用いる場合、コンクリートと鉄筋間の付着作用に制御性能は依存する。ここでは、引抜き型の付着試験をおこない、持続荷重下にある局所の付着応力とすべり関係を一般化した。また、限定された範囲であるが鉄筋表面のふし形状の相違による持続荷重下における付着性能についても調査を加えた。 3.コンクリートの体積変化と持続荷重下にある付着特性を考慮した3次元有限要素解析手法の開発。 長期ひび割れ幅の高精度で予測することを目的とした3次元有限要素解析手法を用いた解析プログラムを新たに開発した。その特徴として、若材齢から始動する自己収縮や乾燥収縮などコンクリートの体積変化や持続荷重下にある付着特性を考慮できることである。 これを用いて、持続引張力を受ける鉄筋コンクリート材にひび割れ挙動に関する既往の実験結果と解析結果を比較しその予測精度を検証した。さらに、上記1.の実験結果についても解析結果と比較し、長期ひび割れ幅と鉄筋量の関係について解析し、ひび割れ制御設計に有用な資料を整理した。
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