研究概要 |
本研究では、コンクリートのひび割れ面に垂直方向の垂直荷重(拘束力)と接線方向のせん断荷重が同時に作用した応力状態における力学的特性を明らかにすることを目的としている。昨年度までに,ひび割れ面に垂直な変位(拘束剛性無限大)または荷重(拘束剛性0)を一定とする拘束条件で,繰返しせん断実験を行い,単調加力せん断挙動との相違等について検討し,コンクリートのひび割れ面におけるせん断挙動に及ぼす繰返し載荷の影響を明らかにしてきた。またこれまでの実験結果より,せん断挙動に及ぼす拘束効果の影響が極めて大きいことも判明した。そこで本年度では,せん断挙動に及ぼす拘束効果の影響を明らかにするため,ひび割れ面における鉄筋の拘束効果を考慮した繰返しせん断実験を計画した。ただし実際に鉄筋を配した試験体を用いる場合,鉄筋とコンクリートの付着挙動の誤差が,実験結果に与える影響が無視できなくなる可能性がある。それ故本実験では,ひび割れ幅に応じて拘束力の変動が可能なクローズドループサーボ制御システムを用いることとした。はじめにそのような制御システムのための制御プログラムを開発し,動作確認のための予備実験を行った。以上の準備を踏まえ、開発した制御プログラムで動作するアクチュエータを用いて繰返しせん断実験を行った。初期ひび割れの有無および拘束効果のパラメータとして,鉄筋比(0〜1.6%),鉄筋の降伏応力度(345Mpa, 1275Mpa),抜出し量などを実際のコンクリート構造物を想定して決定し,各種パラメータがせん断挙動に及ぼす影響について検討した。今後さらに実験データを蓄積し、拘束効果(拘束力と拘束剛性)がせん断挙動に及ぼす影響を明らかにし,せん断剛性低下およびエネルギー吸収について考察していく予定である。
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