研究概要 |
文献調査および既往の実験の観察から,鉄骨造建築骨組の部材の破断は大きく分類して3個のパターンに分けられる.一つは塑性変形があまり見られない状況で脆性的に亀裂が進展する場合,二つ目は塑性変形を大きく経験した後に脆性的に亀裂が進展する場合,三つ目は大きな塑性変形とともに延性的な亀裂が進展する場合である. 上記のパターンに分かれる理由として,塑性履歴の影響,温度の影響などが考えられる.そこで,まず,鉄板の常温での単純引張実験を行い,この場合には塑性変形とともに延性的な亀裂が進展することを確認した.次にH形鋼部材の繰り返し塑性曲げ実験を行い,この場合には脆性的な破面の亀裂が進展することを確認した. 次に骨組解析に有用な亀裂バネモデルを提案するための第一段階として,理想的な脆性材料を対象とした数値解析と発泡スチロールによる脆性的破断実験を行った. 脆性材料の2次元亀裂進展問題として,平板の引張載荷時に亀裂が進展する場合の外力と変位の釣合経路を境界要素法を用いて求めた.次に,長方形断面梁の曲げ載荷時に亀裂が進展する場合の両端のモーメントと回転角関係の釣合経路を同様に求めた.この結果,長さと幅が1:2程度より細長い場合の脆性材料でできた平板や長方形断面梁は亀裂が進展を開始すると同時に,変位制御も荷重制御も出来ない不安定な挙動を呈することが明らかとなった.さらに,平板を3枚組み合わせたH形断面の梁の釣合経路を求めた.この結果,H形断面の梁ではさらに短い場合でも不安定な挙動を呈することが明らかとなった. これらの計算結果を検証することを目的に発泡スチロール材による梁の破断実験を数例行った.この結果からも,変位制御を行った場合でも亀裂が一気に進展する不安定挙動を呈することが確かめられた.
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