1995年兵庫県南部地震では、RC系建物中間階のある層において柱がせん断破壊を起こしたあとついには軸力保持能力を喪失して軸方向に崩壊したものが数多く見られた(中間層崩壊)。このような崩壊の再発を防止する上で柱の軸力保持限界と、そこに至るまでの過程を知ることが重要である。そこで、両端固定形式のせん断破壊型RC柱を4体製作して加力実験を行った。パラメータは軸力比と載荷履歴とし、一定軸力を載荷した状態で、柱が軸力保持能力を喪失するまで水平載荷した。 実験結果を以下に示す。 1)せん断力がほぼゼロになったときに軸力保持限界に達する。 2)軸力比が大きいほど、軸力保持限界時変形が小さい。軸力比0.18では水平変形約10%〜20%、鉛直変形約2%〜4.5%であったのに対して、軸力比0.27では水平変形約3%〜5%、鉛直変形約1%であった。 3)載荷履歴は軸力保持限界時変形に影響を及ぼす。なお、軸力比0.18では載荷履歴の違いにより破壊モードが変化した。 4)水平変形増分に対する鉛直変形増分の比は破壊の進行に伴い増加する。 次に、旧基準により設計された既存建物を、耐震壁の増設で耐震補強することによって中間層崩壊の発生を防ぎ、被害を許容される範囲内にとどめる方法を検討した。10層と5層のRC建物を対象として、補強前と補強後に関する地震応答解析を行った。その際、実験結果を参考にして復元力モデルを作成し、せん断破壊型RC柱の耐力低下および軸力保持能力喪失を考慮した。入力地震動は、最大速度を50(cm/s)に基準化した。さらに、諸設計指針での大地震動に対する許容層間変形が1%程度であることから、そのために必要な壁補強量についても検討した。 解析結果を以下に示す。 1)ベースシア係数が0.5以上になるように補強を行えば、層間変形を1%以下に抑えられる。 2)壁補強量のわずかな違いでも応答が大きく変わることがある。
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