研究概要 |
1.デバイス試験体の静的加力実験 1.1実験目的:モルタル中にビニロン繊維を体積比で1.5%混入した高靭性型セメント系複合材料(PVA-HPFRCC)を用いて,エネルギー吸収デバイスを想定した壁柱を製作し,曲げ・せん断実験を行った。実験の目的は,エネルギー吸収能力,剛性コントロールの可能性,および,せん断応力度レベルの違いによる損傷制御の可能性を把握することである。 1.2実験概要:試験体形状は,柱幅200mm,柱せい450mmで一定とし,柱高さを900,600,450mm と変化させた。試験体数は,柱せん断スパンと主筋の強度の組み合わせにより剛性のコントロールを把握するための試験体3体,せん断応力度レベルを変化させた試験体2体,比較用のRC試験体1体の合計6体とした。 1.3実験結果: (1)PVA-HPFRCC試験体は,RC試験体に比べて,エネルギー吸収能力および靭性能に優れており,また,せん断ひび割れの分散およびひび割れ幅の抑制効果が顕著であったことから,エネルギー吸収材および損傷制御材としての利用が可能であることが把握できた。 (2)せん断スパン比および主筋強度を変化させることにより,曲げ耐力および剛性をコントロールすることが可能であることが確認できた。これは,コンクリート系構造の高い剛性を生かし,比較的小さな変形からエネルギー吸収を行うエネルギー吸収デバイスの実現が可能であることを示している。 2.デバイス材の実構造物への利用 静的加力実験で得られた構造性能特性より,部材の復元力特性をモデル化し,これを制振デバイスとして建物に組み込んだ構造解析を行った。1質点系モデルによる地震応答解析を行い,その制振効果を検討するとともに,耐震補強部材としての効果を検討した。結果として,本研究で対象とした無機質材によるエネルギー吸収デバイス材を建物に組み込むことにより,そのコンクリート系構造の高い剛性を生かし,エネルギー吸収デバイスとしての実現が可能であることを確認した。
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