直交異方性弾性材料からなる積層板や梁について、静的ならびに動的な力学的および熱力学的特性の解明を中心に研究を進めた。変位成分を板や梁の厚さ方向座標の無限ベキ級数に展開する手法により、ひずみや応力などの力学的諸量についても同様に無限ベキ級数で表す。展開ひずみ-変位関係式を用いてエネルギー原理を適用し、2次元ないしは1次元高次理論として板および梁の運動方程式と境界条件式を厳正に導出した。一方、直交異方性材料についての3次元材料法則を用いて積層板および梁の厚さ方向に積分することにより、2次元ないしは1次元高次積層構造理論の基礎式で使用する高次断面力成分と変位成分の関係を誘導した。これらの基礎式は、積層板や梁を2次元ないしは1次元的に取り扱う静的ならびに動的問題において、任意の荷重状態や境界条件について一般的に利用できるものである。次に、構成式から求めた面内応力を用いて積層構造要素の3次元弾性体の釣合式を積分することにより、積層構造要素の解析では重要なせん断応力および厚さ方向の垂直応力の分布を精度よく与える基礎式を誘導した。2次元ないしは1次元高次理論と3次元弾性理論との結合により、積層構造要素の力学的特性を解析する手法は3次元弾性理論を直接用いる場合と比べて計算量が格段に少なくて済み、結果の精度も十分であることから非常に多くの層からなる積層構造要素の解析に適していると云える。 上記の手法を適用して、直交異方性積層長方形板の静的境界値問題ならびに振動と座屈の固有値問題を解析した。板厚方向に層が対称または非対称に配置された任意の積層板について、種々の材料特性に対して自然振動数、座屈応力および詳細な応力分布を精度よく求められることを示した。さらに一次元構造要素としての直交異方性材料から構成される積層梁についても静的ならびに動的力学的特性の解析が、本理論を適用することにより効率よく信頼性の高い結果が得られることが実証された。
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