鉄筋コンクリートシェルは、社会基盤の中枢の施設に用いられ、安全、確実な設計が必要とされている。しかし、これまで数多く公表されてきた鉄筋コンクリート円筒シェルの実験値と数値解析の比較を検討してみると、支持条件や境界条件および載荷条件の曖昧さに起因する種々の不整のため、実験解析の結果は理論解析に反映されているとはいいがたい。 本研究では、実験における曖昧さを除去した実験を行い、得られた結果を数値解析と比較して鉄筋コンクリートシェルの挙動を分析した。 実験においては、機械加工した鋼製のモールドを用いて試験体を作成し、形状初期不整を可能な限り除去した。また、支持条件については、支持縁に鋼球をソケットで固定した支持条件を用いることによって、支持条件の曖昧さを除去した。しかしながら、新たに、鉄筋位置の不整が初期不整の要因として浮上し、これに関する検討も行った。載荷試験においては、トーナメント方式の疑似等分布載荷とした。試験体は鉄筋不整の影響の生じやすい小型の模型(95x95x1cm)に加え、形状不整、鉄筋不整の影響が現れにくい大型の模型(200x150x3cm)を用いた。載荷方法は、小型模型については油圧アクチュエータ式載荷装置を用いて、変位制御方式で載荷した。また、大型模型については8連の複動ジャッキシステムで荷重制御方式で載荷した。載荷については単調載荷試験とともに、積雪の影響を考慮した繰り返し載荷試験を行った。実験解析の結果、鉄筋コンクリートシェルは支持条件による局所変形を生じることなく、破壊に至った。また、これまで、支持条件や形状初期不整に比べ、あまり注目されてこなかった鉄筋位置の不整が破壊モードや耐荷力に大きく影響を与えることを示した。 数値解析においては、退化シェル要素を用い、有限要素解析を行った。数値解析の結果、実験及び数値解析結果は非常に良い一致を示し、数値解析は実験性状を適切に表現できることが明らかになった。
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