研究概要 |
本研究の目的は,室空間での計測によって得られる気流の三次元速度,温度,汚染物質濃度の三つの環境要素データに,流体力学の基礎方程式を融合することによって,室空間全体にわたってそれらの分布を合理的に推定することができるシステムを開発することである。 また,本研究では,計測によって得られたデータを生かしつつ,欠測点でのデータも数値流体力学の手法によって推定することで,空間全体にわたって流体方程式を近似的に満足する合理的な環境要素分布を推定するための手法を開発し,その有効性を実証するところまでを研究目的とする。 一方,以下に本年度実施した研究の結果の概要を示す。 (1)60cm×60cm×200cmの風洞内に長手方向に主流をもつ一様流を発生させ,流れ場に対してスリット光の照射角度を変化させ,意図的に奥行き成分をつくり,定常三次元成分速度分布の測定精度の確認を,各時間ステップごとに得られた速度成分と100の時間ステップ速度成分を各格子点で棄却付き平均化処理を行なった速度成分について行なった。その結果,平均化処理を行なうことによる精度向上がみられた。また前者の測定精度は比較的低いため,非定常流れへの適用は今のところ困難であると思われた。 (2)測定領域を分割し,複数の撮影領域における解析結果から元の測定領域の速度分布を求める手法は確立したので,大空間の気流分布測定も可能となった。 (3)3次元空間座標,時間を独立変数とし,3次元速度成分,圧力,温度,濃度を従属変数とした統合型費用関数法を考案した。その結果,実測および数値計算の欠点を相互的に補い,より合理的な環境要素分布を推定できることが分かった。 (5)室内気流場において,実測結果と数値計算結果に統合型費用関数法を適用することで,合理的な流れ場を再現することができた。
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