研究概要 |
ICBEN Team 6によって騒音のうるささに関する国際標準尺度が各言語圏で平行して構成された。英語では"extremenly","very","moderately","slightly","not at all"、日本語では「非常に」、「だいぶ」、「多少」、「それほど・・・ない」、「まったく・・・ない」となった。これらの尺度が等価であるために、1)どの言語も最大の程度は同じである、2)被験者の違いは無視できるという2点が仮定された。2)を解消し、1)を検証するために、日本語と英語に精通する人々を被験者としてICBENによる騒音のうるささ尺度を構成する実験を行い、ICBENによって提案された日本語と英語のうるささ尺度の最上位の程度表現語の強さが同じかどうかを調べた。被験者は同時通訳、翻訳家、大学の英語教師等で、英語を母国語とする被験者36名、日本語を母国語とする被験者37名であった。 その結果、日本語の最上位の言葉には「きわめて」が選ばれ、ICBEN実験で選ばれた「非常に」とは異なったが、その差はわずかであった。一方、今回の実験で英語の最上位に選ばれた"extremely"はICBEN実験の結果と一致した。言葉の強さの最大値を100とすると、「きわめて」と"extremely"の強さはそれぞれ93.3と96.9であった。これらの平均値の間には統計的に有意な差が認められたが、その差は小さく最大の言葉の強さには大きな差はないことが確認された。 騒音のうるささに関する日本語と英語の程度表現語について母国語間で比較検討したところ、「そうとう」や"fairly"といった言葉の心理的な強さの評価が母国語間で異なることがわかった。これらの違いは言語の習得方法の違いによると考えられる。そのため日本語と英語に精通した人々を被験者として言葉の問題に関する研究を行う場合、これらの点に注意しなければならない。
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