本研究では、地表層乱流測定装置(シンチロメータ)の性能評価を行い、建築空間における乱流フラックス、とりわけ顕熱フラックスの定量的評価方法の確立をめざして以下の検討を行った。 1.ミラー反射によるパス操作の基礎的検討 今年度は、本研究の目的に適用可能なミラーとして銀+多層膜付の全反射ミラー30mmφを購入し、その反射特性の基礎的実験を行った。具体的には直線偏光した波長6.328.(ヘリウムーネオン)を使用し、レーザー光の入射角による出力変化、ミラーの反射角による強度変化を測定した。その結果、指向性による大きな特性変化は見られず、セッティングによるずれの影響は無視できる程度であることを確認した。 2.各種地表面ならびに屋上面におけるフラックス測定 シンチロメータの適用限界を検討する目的で以下の各種地表面において熱収支観測を行い、渦相関法など既存の評価手法による顕熱フラックスとの比較検討を行った。 (1)水田(埼玉県宮代町)を対象に5月の田植え直後と8月の2回、各2日間 (2)草地面(筑波大学実験圃場)を対象に5月と7月の2回、各5日間 (3)団地の住棟間の草地面(東京都北区の赤羽台団地)を対象に8月の3日間 (4)屋上緑化面(福岡市のアクロス福岡屋上)を対象に9月の5日間 (5)河川水面(東京都隅田川)を対象に8月の2日間 いずれの測定でも、シンチロメータによる顕熱フラックスは既存の評価手法と非常に良い一致を示した。なお、地面修正量を加味した測定高度の入力を10cm単位で変化させ、それによるフラックスの変化を検討した結果、植被面においては草丈との整合性が必ずしも見出せず、検討の余地が残された。 3.建物壁面の顕熱フラックス測定の可能性検討 次年度の実測に向け、壁面における放射収支測定、壁面貫流熱量の測定、熱画像による表面温度測定などに関し、治具の作成等の準備を行った。
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