本研究では、地表層乱流測定装置(シンチロメータ)の性能評価を行い、建築空間における顕熱フラックスの定量的評価方法の確立をめざして以下の検討を行った。 1.ミラー反射によるパス操作の基礎的検討 昨年度のミラーに関する実験室での基礎実験をふまえ、屋外での実測を行った。ミラーを用いない標準測定との比較検討のため、岡山大学所有のシンチロメータをリファレンス用として貸与頂き、9月に岡山市内のグラウンドで5日間比較実測を行った。その結果、transmitter直後の45度入射、receiver直前の45度入射、およびその両者の組み合わせの3ケースについては両者の測定値に十分な一致が得られた。しかしながら、ミラー1個で約10度入射で行ったV字のケースでは、ミラーを介した出力に大きな変動が生じ測定不能であった。その後、日工大キャンパス内にて10月に上記の点に関して再実験を行ったが、V字に関してはやはり測定できなかった。この理由は、ミラーがパスの中央部分に位置することにあると思われ、光の揺らぎを測定するという原理上、ミラーの前後にかなりのパス長さがあり、その間での揺らぎが無視し得ない状況では、小面積のミラーによるパスの変更が不可能になるものと推測された。 2.各種地表面ならびに屋上面におけるフラックス測定 昨年に引き続き、シンチロメータの適用限界を検討する目的で以下の各種地表面において熱収支観測を行い、渦相関法など既存の評価手法による顕熱フラックスとの比較検討を行った。 (1)新宿御苑中央部の芝生広場(7月31日〜8月6日) (2)ステップガーデンを有する建物の屋上緑化面(8月20〜25日) いずれの測定でも、シンチロメータによる顕熱フラックスは既存の評価手法と非常に良い一致を示した。なお、地面修正量を加味した測定高度の入力を10cm単位で変化させ、それによるフラックスの変化を検討した結果、ステップガーデンでは約1.9mとなり、植栽の状況からみて妥当な結果が得られた。 3.建物壁面の顕熱フラツクス測定の可能性検討 窓面用治具を作成し測定を試みたが、レーザー光の正面に測定者が立てない状況では光軸合わせが予想以上に困難で、建物から突き出したミラー部分への何らかの改良が必要と思われる。
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