研究概要 |
本研究は、中国内蒙古ホルチン沙漠に位置する民居を対象に、沙漠化防治事業と並行し、現地の詳細な住環境の実態調査を行い、限られた自然エネルギーを活用した、持続的発展可能な生活手法の提案および住居形態の改善について検討することを目的としている。当該地域は、厳しい大陸性気候で、建築形態は日本とは大きく異なり、このような調査報告は他に見受けられない。尚、科学研究費で採択された本年度の研究実施計画は、以下の通りである。 1.風土の調査と、民家建築における物理的な住環境性能の把握、2.持続的発展可能な断熱材と躯体構造の開発3.アンケート調査(住まいに対する意識調査)これらのうち、1,2に関しては、科研費及び砂漠化防治団体の支援により1999年1月、および2000年7月の2回にわたり、現地に赴き、物理測定を中心とした住宅の複合環境調査を行い、その実態と問題点を明らかにした(別紙学会報告済)。3については、2001年の現地訪問が不可能となり、計画変更を余儀なくされた為、自然素材を用いた、断熱材の開発に重点をおくこととした。さらに、筆者が近域へ出張中、気象条件や住戸内環境が人体に及ぼす影響を継続研究とする為、予備実験を行なっている。以下に、これまで得られた研究実績の概要を述べる。 1)中国内蒙古自治区の気候風土と、民家建築における温熱・空気質・光環境等、住環境性能の実態が明らかとなり、特に、冬季における断熱性能が極端に劣っていることが判明した。 2)温熱環境改善の試みとして、当該地域の自然素材に着目し、わら繊維を用いた、新たな断熱材の開発を試み、その改善効果を検証した。 3)現地素材を断熱材として用いることにより、持続的発展可能で、経済的な住宅建築の方向性が示唆された。 今後、実用化に向け、良質で低コストな量産型建築への可能性を模索して行きたい。さらに、自然エネルギーの積極的利用と相まって、省エネルギー効果をシミュレーションにより明らかにしていく予定である。
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