精神病院における病室タイプの提案に関する研究 ベッド以外の拠点づくりを軸に

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12650614
• 研究機関: 三重大学
• 研究代表者: 今井 正次 三重大学, 工学部, 教授 (60023321)
• キーワード: 精神病院 / 急性期患者 / 病室 / 巡回調査 / 患者行動 / 患者属性

研究概要

前年度までの研究成果を受けて、さらに三重県心の医療センター(旧高茶屋病院)において、急性期閉鎖病棟を中心に、観察調査をし、四日市、千葉・福島・大阪の病院における精神病院のヒアリング・観察調査を行った。また、精神科の医師と病室のあり方について議論をし、問題を整理しながら、さらに、調査データの分析方法について多種の方法を試み、マップインフォによる分析などを通して、課題の中で次のような知見を整理している。
・ 長期療養者には社会的入院とも言える患者も少なくなく、急性期の患者の生活療養環境とは空間的に区別をしないと治療空間としての性能を保持できない。
・ 過去の非常に貧しい病棟・病室環境の反動もあるのではないかと思われるが、改築後の比較的恵まれた4床室では、旧病室以上に患者の交流、積極的行為がみられず、カーテンを閉めてベッド上にこもっている時間が多い。これは安定的個人空間・個人領域の重要さを示すものと理解される。
・ むしろ個室患者の方が活発な行動があり、個室相応患者の環境の重要さを意味していると考えられる。
・ 患者が趣味的行為を安定してできる場所が少ない。
・ また、病室の中にベッド以外の拠点なる空間、個人的作業・趣味などのできる空間が必要である。
特に、育児時の精神障害者の入院治療施設として、医師と討論の中から典型的病室の提案をした。これをベース一般精神病院の病室について検証する必要がある。
等々であるが、さらに分析・観察を進めることにより、最後の仮説を検証すべく、来年度研究方法を発展させたい。

研究成果

• [文献書誌] 松原賢明, 今井正次, 中井孝幸, 石崎理英子: "病棟内における患者の自由時間の生活行動 精神病院の建築計画に関する研究 その3"日本建築学会東海支部研究報告集. 第37号. 709-712 (1999)
• [文献書誌] 石崎理英子, 今井正次, 松原賢明, 中井孝幸: "精神病院入院患者の行動と属性からみた環境変化に関する研究 精神病院の建築計画に関する研究"日本建築学会東海支部研究報告集. 第37号. 637-640 (1999)
• [文献書誌] 松原賢明, 今井正次, 中井孝幸, 石崎理英子: "患者属性から見た精神疾患病棟の入院生活 精神疾患病棟の建築計画に関する研究 その1"日本建築学会大会学術講演梗概集(東北). 65-66 (2000)
• [文献書誌] 石崎理英子, 今井正次, 中井幸麹: "精神疾患病棟のデイスペースにおける入院生活行動 精神疾患病棟の建築計画に関する研究その2"日本建築学会大会学術講演梗概集(東北). 67-68 (2000)
• [文献書誌] 松原賢明, 今井正次, 石崎理英子: "入院期間と退院の可能性からみた精神疾患患者の入院生活-精神疾患病棟の建築計画に関する研究"日本建築学会大会学術講演梗概集(関東). 347-348 (2001)
• [文献書誌] 石崎理英子, 今井正次, 松原賢明: "離室率から見た入院患者の日常生活行動 -精神疾患病棟の建築計画に関する研究 その4"日本建築学会大会学術講演梗概集(関東). 349-350 (2001)