本研究の目的は、タイトルにもあるように、精神病院の療養環境としての環境確保の方策を提案することである。精神病院は特に治療器具として環境の重要さがあるにもかかわらず他の施設に比べても貧しい療養環境にあった。この研究結果は、他の病院ばかりでなく、住宅も含めた24時間生活施設計画に大きな示唆を与えるものと考えている。 研究は、改築前後の患者行動の詳細な観察調査を中心にいくつかの精神病院における患者行動の観察・ヒアリング、および精神病院での調査困難さを勘案して、小児病院における病室レイアウト実験による病室環境の意味の確認とレイアウトへの示唆の獲得、さらにこれらの知見を下に、各種施設のの病室・療養室・居室等を評価することで、研究方法としている。その結果を要約すると、・改築後の比較的恵まれた4床室では、旧病室以上に患者の交流、積極的行為がみられず、むしろ個室患者の方が活発な行動があり、環境の重要さを意味していると考えられる。 ・患者が趣味的行為を安定してできる場所が少ない。 ・総合失調症の場合、2〜3ヶ月で治癒し、退院することを前提に考えると、その間、人間関係、空間との関係を再構築していくいくつかの段階があり、それに相応しい病室を提供する必要がある。個室も、ただ個室であればよいのでなく、次のステップに展開する環境の提供となる必要もある。 ・精神病患者は、寝たままの環境を基本とする考え方では相応しくない。病室あるいはその周辺に(患者の治癒状況による)ベッド以外の拠点を提供することが、治療環境として重要であり、そうした事例も試みられつつあるが、その形態についてはさらに精神科医との共同研究が必要である。
|