人間の図式と行動、それを取り巻く環境のかかわりを明らかにするため、以下の研究を行った。 1.アイカメラを用いた探索歩行実験 (1)アイカメラを用いた迷路内探索歩行実験の結果をもとに、コンピュータ上で注視と歩行行動を同時に再現可能なシミュレーションモデルの開発を試みた。そして実験結果とシミュレーションモデルの比較、検討を行った。 (2)さらに地下鉄駅舎でもアイカメラを用いた探索歩行実験を行い、迷路探索歩行実験の結果と比較しながら注視行動を分析した。その結果から注視対象による注視時間分布の違い、階段や天井越しの斜交い注視、サインを注視する際の注視パターン、経路学習による注視対象の変化などを明らかにした。 2.仮想迷路を用いた複数の被験者による探索行動実験 (1)建築空間における集団行動の解明のため、仮想現実空間内で複数の被験者が情報交換と探索歩行可能なシステムFreeWalk-VRMLを開発した。本システムでは、複数の被験者が自分自身の化身であるアバタを介して仮想現実空間に参加する。そして各被験者はCCDカメラやヘッドセットを用いて他の被験者と会話を行う。このシステムを用いることにより、探索方法や探索経路、会話の制限を行わずに実験を行い、会話や歩行軌跡のデータを詳細に記録することが可能になった。 (2)仮想現実空間内に迷路を構築した。そしてまず4人の同一被験者群に対し、2人ずつが組になり他の組と競争して目的地を探索する競合協調型の探索行動実験と、4人の被験者が協調して目的地を探索する協調型の探索行動実験を行った。これらの実験結果から実験中にみられる探索行動の種類、ある行動をしている状態から別の行動をしている状態への遷移である状態遷移、情報交換でみられた会話の種類や、実験後の被験者が描画したイメージマップの特徴などについて明らかにした。さらに8人の被験者からなる集団でも同様の実験を行った。
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