人間の図式と行動、それを取り巻く環境のかかわりを、迷路や地下鉄駅舎における探索行動を例に明らかにしょうとした。そのために以下の研究を行った。 1.実在する地下鉄駅舎で、アイカメラを装着した被験者による探索歩行実験を行い、迷路での実験結果と比較しながら分析を行った。その結果(1)サインへの注視は反復的かつ集中的になる、(2)斜交い注視には壁以外に柱、人、階段や天井などを遮蔽縁とするものがある、(3)経路学習後は柱やサインへの注視が減少し、床や人への注視が増加することが分かった。 2.アイカメラを装着した被験者が地下鉄駅舎出入口の階段を上る実験と下る実験を行った。その結果、(1)階段上り歩行時は階段のどの場所にいるのか、その手前では直進歩行であるか曲がり歩行であるかによって注視行動が変化する、(2)階段下り歩行時とその手前での注視行動の差は明確でなく、むしろ個人やシーンによるばらつきが大きいことが分かった。 3.キーボードと平面スクリーンを用いたシミュレータを用いて、アイカメラを装着した被験者による探索歩行実験を行い、現実空間での実験結果と比較を行った。その結果(1)現実空間で見られる短時間注視がほとんど見られない、(2)障害物と自分の身体との距離の把握が困難になる、(3)現実空間の歩行では見られない受動的な注視が生じる、(4)現実空間では容易なはずの行動をとることがしばしば難しくなることが明らかになった。 4.多数の被験者が自由に情報交換しながら探索歩行が可能なマルチユーザ型群集歩行シミュレータを開発した。そして、4人または8人の被験者が自由に会話しながら目的地を探索する実験を行った。実験結果の分析から、実験中に見られる行動や会話の種類、被験者が実験後に描くイメージマップの特徴などが明らかになった。今後さらに実験結果の分析を進め、災害時の避難行動などの解明も目指す予定である。
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