研究課題/領域番号 |
12650616
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大窪 健之 京都大学, 工学研究科, 助手 (10252470)
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研究分担者 |
小林 正美 国際連合地域開発センター, 防災計画兵庫事務所, 所長 (50109021)
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キーワード | 地域防災 / 環境保全 / 京都市 / 地震火災 / 消防水利 / 表流水 / 地下水 / 自然水利 |
研究概要 |
平成12年度に行った研究内容について、以下に要約する。 (1)京都市の水の大循環に関する調査 まず、自然風土の持つ水を防災水利として再活用していく可能性について大きく把握しておくために、現状での京都市内の包括的な水収支、即ち水の大循環について整理を行った。この結果、1994年の渇水期を基準とした一日換算量として、降水(雨水)約147万トンに対し、市域の主要な河川や水路の水が約362万トン、地下水の賦存量に至っては約221億トン存在している計算となった。 京都市の総木造家屋数は約44.8万棟であるが、通常火災の計算では、河川の1日分の水だけで約9万棟(20%)以上の火災を消火できることとなり、地下水に至っては仮に全市が焼失する事態になっても、それを100回以上消し止めることが可能な量を備えていることが明らかとなった。 (2)河川等の形態および流量に関する調査 これまでに基礎調査を行っていた、岐阜県大野郡白川村、郡上郡八幡町に加え、京都市内の一部河川の流域について、現地踏査によって河川等を流路追跡し、分水・合流点を把握することで、実際の流路構成と一部ではあるが流量について調査を行った。この結果を地図上に情報として細かくプロットする事で、水路構成を俯瞰できるベースマップを作成した。 (3)河川等の利水技術と地域的取り組みに関する調査 調査対象となった地域では、河川等の開水路の水量調整に、簡単な堰などを用いて流下する水のネットワークを自動調整したり、流量の少ない水路においては、充分な水を常時確保するために板状の堰を挿入できる構造が見られ、水を各所で溜めながらゆっくりと網目状に流していく伝統的な水のコントロール技術が使用されていた。これらの伝統的な水利技術について実測に基づいてデータを取得し、整理・分析を行った。同時に水利用に関する地域古来の取り決めなどについて、地域住民等へのヒアリングを行った。 (4)井戸等の利水技術と地域的取り組みに関する調査 調査を開始したところ、多くの井戸が個人の所有になっており、全市的な利用実態についてはプライバシーの問題も含めて把握することが出来なかった。しかしながら、銭湯に代表される事業所が所有している比較的規模の大きい井戸については、実際に「災害時に水を提供する」内容の協定を、地域や市と取り結んでいるケースもあり、それらについて所有者(事業者)及び関連部局(京都市)へのヒアリングを行った。 特に井戸については全体にデータが不足しているため、今後も追加調査を行っていく予定である。
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