本研究では、明治以来の西欧の近代化導入し対して、建設技術がどのような経過・普及を辿って発展してきたかを、建設技術の出版状況から捉えようとするものである。本年度の研究は、明治初期から前大戦の終わるまでの期間についてどのような出版物が刊行されてきたか、網羅的に資料を収集し、これのデータベース化を行なった。データベース作成にあっては、書名、著者、出版社、出版年(初版)、ベージ数、体裁(大きさ)を項目として設定し、そのデータ数は4371であった。 以上のデータをもとに、時期別・分野別の出版状況を明らかにした。はじめに時期別の出版状況では、大正中頃から急激な増加が見られ、昭和10年頃からの戦時体勢期から減少が生じている。求た、全体を建築学会の論文投稿別の分野に分けて分析を行なうと、各分野毎に出版数の違いが存在し、明治期に多くが出版された「材料・施工」分野のように、実用的な領域からのものが早くに普及が行なわれていた。出版状況の比較のために収集した土木関係の技術書からは、建築は斯領域に比べ、多少遅れていることが解明できた。次に、各分野別(本研究では、材料・施工、構造、環境工学、建築計画、歴史・意匠の5分野)の出版状況では、材料・施工にあっては、有機材料と施工の刊行が早く、昭和に入るとコンクリート、次いで金属関係の出版物が増加した。構造にあっては、耐震技術の進歩は著しいが、書籍にこれが紹介されるには時間を要し、多分野よりも発刊状況は遅い。環境工学では、構造と同様に遅い時期の出版に該当し、内容的には、暖冷房、給排水が早く、その後に電気と設備一般が多く刊行されるようになった。建築計画では、大正期から各種建物、室内・庭園が刊行の多くを占める特徴がある。最後に歴史・意匠では、「日本建築史」関係がかなり遅く、昭和10年以降から多く出版された。
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