近年、建築設計教育において3次元CAD等のグラフィックスツールを利用する仕組みは必須の事項になってきている。Windowsのような商用OS上で動作するソフトウェアの中、建築教育に特化して扱える3次元のツールは比較的高額の部類に属する。教育コストを下げつつ、教育効果を上げていく工夫をするには限界がある。そこで、近時、脚光を浴びるオープンソースプログラムのOS、Linuxに着目し、これとWindowsで作るデュアルブートの環境下で、相互に利用上の制約を強く受けない複数のフリーウェアと低廉なシェアウェアを有効に組み合わせて、コストレスに建築設計教育上の手段を獲得しようという試行研究である。被験者を建築の学修段階にある学部学生に求め、かかるクロスプラットフォームの環境下で、どのような教育上の効果が期待できるかの新たな知見を観察評価法によって得ようとするものである。 研究は被験者の募集に始まり、被験者がWindowsの環境に未経験のLinuxを導入してから、UNIXの基本コマンドを習得し、建築的な空間モデルを表現できるソフトウェアの環境を構築するまでの第1段階、被験者に対し、クロスプラットフォーム環境下で、幾つかのモデラー、ファイルコンバーター、レンダラー、マニュピュレーターの4種のアプリケーションに習熟させながら、小さなネットワークを介して行う教育コラボレーションの第2段階を経て、被験者学生の作品をネットワークに公開して外部実務者からの評価を仰ぐ第3段階に差し掛かったところである。 別掲既報の一つは本研究課題の仮説論を展開したものであり、もう一つは、上記第2段階までの試行経過を評価して研究課題における新たな教育環境を構築し得るという仮説の所在を明らかにしたものである。
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