今年度は、明確な原価管理方針を持つ専門工事業者8社を対象にヒアリングをおこない、契約関係、原価管理の手法の実態を把握し、労務間接費の算出の根拠を明らかにした。調査対象各社の概要と原価管理手法は以下の通り。 ・設備系ダクト工事A社:1954年に設立し、現在大手設備会社の一次下請けを材工一式で担う。直庸の作業員と下請の作業員とをコントロールし、原価管理を行う。 ・設備系ダクト工事B社:1972年に設立し、現在大手設備会社の一次下請けを材工一式で担う。労務は全て外注し、社員が現場管理を行う。 ・設備系給排水衛生工事C社:1985年に設立し、受注の大部分を某大手設備会社から材支給で請負う。外注を労務単価契約とした原価管理を行う。 ・設備系電気工事D社:1958年に設立し、社員が現場を管理し、直庸工を雇用せず労務は全て外注する。分離発注で元請になることもある。 ・躯体系型枠工事E社:1982年に設立し、現在大手ゼネコンの一次下請けを担う。直庸工を社内外注化とし、社員(番頭)が現場管理を行う。 ・躯体系鉄筋工事F社:1961年に法人化。去年、鉄筋直庸工と加工工場を分社したが、工務機能は本社が担う。マネージメントに特化し労務は全て外注。 ・躯体系鳶・土工工事G社:昭和30年代後半に現在の体制となり、大手ゼネコンの一次下請を担うも、今後の意向は公共の土木。直庸工は雇用せず、全て外注。 ・仕上系左官工事H社:1955年設立し、大阪本社・東京本店がある。大手ゼネコンから受注しているが、単価が厳しく外注でつじつまを合わす原価管理。 以上を概括すると、現状の専門工事業者は、元諸に対してコストの主張が十分にできない状況にある。また、直接に作業者を雇用する必要を各社とも認識しているが、工事量の変動、雇用に伴う固定経費を確保できていない。今回調査対象とした、専門工事業者は、徹底的に労務外注化を指向し、本社機能を管理業務にシフトする傾向があり、重層性はさらに高まる。このことは、本来労務提供を機能とする、専門工事業者の将来像に影響を及ぼすと考えられる。
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