疾病構造の変化、医療技術の進展、少産少子化をはじめとする小児医療をとりまく環境が大きく変化するなか、今後の小児医療は単なる治療にとどまらず、こどもやその家族のQOL(Quality of Life)の向上を目指すことが求められている。治療空間であるとともにこどもの生活空間でもある小児医療施設を、こどもの生活、成長の場、とりわけあそび環境としての視点より捉え直し、今後の小児医療施設像を探ることの意義は大きいと考えられる。本研究は、このような認識のもと、こどもの癒しの空間としてのあそび空間の役割と構成方法を、こども病院等国内事例におけるあそび空間整備・運営状況と関係者の意識に関するアンケート調査および運営・利用に関する実態調査にもとづき明らかにするものである(平成12〜13年度)。 本年度は、平成12年度の成果の総括にもとづき最終的な研究成果のとりまとめ方針を確定し、本年度の研究実施計画を作成(改訂)した後、国立小児病院における入院児・家族によるプレイルーム等の利用実態と意識に関する調査を実施して病棟についての満足度評価の検討を行いその要因の解明を試み、本研究の成果の総合的分析と最終報告書のとりまとめを行った。あそび空間の効果の検討、計画指針の作成、設計事例におけるケーススタディについては十分詰めきれず、今後の研究課題とせざるを得なかった。病棟についての満足度評価の要因分析からは、入院児の満足度評価が病床とナースステーションの近接性等の病棟計画の要因を中心とするアイテムによりかなりの程度説明可能であることなどが示された。あそび行為数を高める病棟計画が満足度評価を高める病棟計画としても有効と考えられることを確認できたのは本研究の大きな成果である。
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