こどもにとって、治療空間であるとともに生活空間でもある小児医療施設を、こどもが生活し、成長する場、とりわけあそび環境としての視点より捉え直し、今後の小児医療施設像を探ることの意義は大きい。本研究は、このような認識のもと、こどもの癒しの空間としてのあそび空間の役割と構成方法を、こども病院等国内事例におけるあそび空間整備・運営状況と関係者の意識に関するアンケート調査および入院児行動・利用に関する実態調査にもとづき明らかにするものである(平成12〜13年度)。 まず、施設整備に関わる法令、制度、施策等の情報を収集し、医療関係者等の助言を得て具体的な研究実施計画を作成した後、国立小児病院における入院児行動観察調査(平成11年度実施)のデータを分析し、入院児の病棟内の行為全体の中であそび行為が行為数、時間数とも最大で、その比重は4割前後とかなり大きいことなどを明らかにした。数量化I類によるあそび行為数の要因分析からは、あそび行為数が入院児属性、周囲の人の条件とともに病棟計画の要因により、かなりの程度説明可能であることが示せた。 プレイルームの利用状況とあそび環境の実態についても、詳細な行動観察調査を行ない、分析を行った。数量化I類による要因分析からは、プレイルーム内のあそび行為数、時間数も、かなりの程度説明可能であることなど、同様の結論が導かれた。 さらに、入院児・面会者の意識に関するアンケート調査より、病棟についての要望と評価の検討を行い、入院児の満足度評価が病棟計画の要因を中心とするアイテムによりかなりの程度説明可能であることを示した。満足度浄価とあそび行為数の要因分析結果は整合性が高く、入院児について、あそび行為数を高める病棟計画が満足度評価を高める病棟計画としても有効と考えられることを確認できたことは本研究の大きな成果である。
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