本研究は小規模マンションの管理実態を明らかにし、行政の支援体制の総合化を検討するための基礎的資料を提供するために行った。 最初の調査は横浜市内にあるマンションについて衛生局の協力を給水台帳の分析と理事長対象にアンケート調査を行った。主な結果は以下の通りである。(1)台帳を整備すれば常にマンションストックの状況を把握できること、(2)分譲マンションの方が民間賃貸経営のアパートより給水管理が悪いこと、(3)小規模マンションの方が大規模マンションより自主管理が多く、管理体制が不十分なことから保守状態が悪化していること、(4)水質検査結果と建物管理状態は極めて相関性が強いことが判明した。 2番目に群馬県内のマンションの実態調査を行った。地方のマンションは大半が1棟であるから、東京近郊に多く見られる団地型は少ない。平均規模は60戸である。管理を支える市民運動団体がなく、業界、行政の協力体制がないから、スラム化が激しい。大都市圏と異なるのは中心市街地が急速に人口減少していることで、その結果居住者の管理努力に関わらず中古価格が暴落している。空き店舗の増加も深刻である。 3番目の調査は自治体又は管理組合団体から提供された資料及び筆者の調査資料で分譲マンションの供給動向の分析をした。地方都市の方が首都圏より高層化している。首都圏では戸当たり敷地面積が年々縮小している。 4番目の調査は総務省統計局の住宅・土地調査結果報告データーを利用して14地区(東京都、12県、札幌大都市圏)及び首都圏の距離大別の住宅動向分析を行った。ザル法化した都市計画法の実態を明らかにした。地方都市の崩壊は厳格な土地利用のルールが確立していないことによる。分譲マンションの存続には人口予測に基づいた安定した民主的な都市計画が必要であることが判明した。
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