ニューヨークの都市建築史の基本的な資料収集およびフィールド調査を行い、調査結果をまとめるとともに、当該研究分野の第一人者であるリチャード・プランツ教授(コロンビア大学都市デザイン学部ディレクター)へ研究協力をあおぎ、数回にわたる議論を通して草創期のニュー・アムステルダム段階から、イギリス、フランス、イタリアの影響が加わっていくプロセスを明らかにした(成果報告書:第2章メディア参照)。 ついでニューヨークにおけるアパートメントの成立過程について既往文献を詳細に検討し、その研究レビューを行うとともに、ニューヨーク以外のアメリカ都市における不動産市場としてのアパートメントと都市居住の関係を探った。またニューヨーク、とりわけマンハッタンの不動産資料がきわめて多岐にわたるため、今回の研究でその所在調査を行い、不動産資料の全貌をほぼおさえることができた(以上は成果報告書第3章不動産の項参照、なお本研究遂行にさいして、日本女子大学鈴木真歩氏、東京大学阿部祐子氏の助力を得た)。 最後にニューヨークの都市社会の現状を知るために、現在ニューヨーク市が行っている、ロワーマンハッタンにおける都市再生計画について、市当局から計画資料を入手するとともに、都市計画局の専門家に数度にわたるインタビューを行った。その成果をまとめたものが、成果報告書第1章社会の内容である。 かくして、「社会」「メディア」「不動産」という3つのキーワードからニューヨークという巨大都市の構造と空間=社会を明らかにする試みの初発的なステージはほぼ設定し得たものと考えている。今後、社会-メディア-不動産という三位一体構造が都市文化にどのように影響を与えているのか、つまり都市文化の生成と成熟の問題へと本研究視角は向かうことになろう。そのための布石と基本的な文献の収集、資料所在情報の確認と公開という所期の目的はこれで果たせたものと評価している。
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