研究概要 |
近代建築の構成システムを,その変容過程の分析により場所論的にあきらかにしようとする本研究は,平成14年度には,ルイス・バラガンの住宅作品(バラガン自邸他)の研究,ル・コルビュジエの住宅作品(ラ・ロッシュ=ジャヌレ邸他)の研究,さらにルイス・カーンの住宅作品の研究(ホーニックマン邸)として遂行され,以下の6論文が公表された。 1)日本建築学会近畿支部研究報告集:2論文 2)日本建築学会大会学術講演梗概集:2論文 3)日本建築学会中国支部研究報告集:1論文 4)SD Review 2002:1論文 上記の住宅作品の研究は,草案群の吟味・分析を基礎とし,3種のダイアグラムの作成による平面分析と,作品の模型作成による検証,さらには建築家自身の言葉による分析と解釈をとおして遂行された。 上記の論文は,主に,以下のアスペクトの分析をとおして遂行された。 A)住宅を構成する諸要素のシステムの解明。B)住宅(内部)と土地(外部)との関わり合いの解明。前者については,主室の諸要素の配置構成の変容分析をとおしてバラガン,ル・コルビュジェ,カーンの構成方法があきらかにされた。後者については,内部と外部を媒介する要素の意味がダイアグラムC(住宅と土地とのゲシュタルト)作成とともに主題化され,その場所論的解釈が目論まれた。 ルイス・バラガンの論文では,一連の住宅作品のフォームの変容分析をとおして,多様なありかたで成立する2つの場所をつなぐ結節点が主題化され「テラス」が「間の場所」として分析された。とくにバラガン自邸,ロペス邸,ガルベス邸の分析では,ダイアグラム作成をとおして,バラガンの空間構成の深まりの仕方が指摘された。 ル・コルビュジェの住宅作品では,移行の場所,「斜路」が主題化され,空間構成の方法が分析された。 カーンの住宅作品では,内部成立を担う特異なエレメントが「サテライト」として指摘された。
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