本研究は、近世期のエジプト・カイロに建設された遺構、なかんずく「サビール・クッターブ」(公共給水施設兼コーラン学校)と呼ばれる都市建築を中心に、オスマン朝建築の立面意匠にみられる建築的な諸特徴を明らかにすることをめざして、平成12年度より2カ年の計画で実施してきた。 カイロにおけるサビールクッターブの現存状況と建築的実態を把握する目的で昨年度実施した調査の結果を踏まえて、本年度は、それら現存遺構ごとに所在地・立地を確認し、建築的な実態を個別に記述するとともに、可能なものについてはデジタル写真等から立面図を作成し、それらの立面意匠における構成や各部装飾の意匠や技法について、整理し比較考察した。その成果は、2001年9月に日本建築学会大会学術講演会において、さらに2002年3月に日本建築学会関東支部研究発表会において、それぞれ口頭発表を行なった。また、科研費補助金によるプロジェクト研究「イスラム地域研究」第5班aの第8回研究会(2001年5月19日、於東大東洋文化研究所)においても発表を行ない、多角的な議論をなされた。 また、咋年度カイロの実例とあわせて、トルコのイスタンブルにおける給水施設について同時に調査されたが、その調査の結果を踏まえて、やはり2001年9月に日本建築学会大会学術講演会において、イスタンブル所在のサビールについて報告し、またこれに関連して、イスタンブルの歴史的な給水路について、既往研究などに基づいた研究の成果を2002年3月日本建築学会関東支部研究発表会で発表した。
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