この研究は、王宮建築の各棟の屋根上に載る小尖塔ガジューの類型化を行い、その形態的特質を明らかにするものである。研究対象は、カトマンズ盆地に現存するカトマンズ王宮、パタン王宮、バドガウン王宮におけるチョク建築と層塔のガジューである。今年度の研究実績は次の通りである。 1934年の地震前に撮影された写真資料を取り寄せた。また、これまでの現地調査により収集した写真・図面を建物毎にカード上に整理した。同時に、パソコンを用いたデータベース構築の環境を整え、パタン王宮の遺構を例に画像の取込みを行い、ガジューのデータファイル作成を試みている。 上記の資料整理作業を基にガジューの形態を検討した結果、次の点が明らかとなった。(1)ガジューは、層塔建築の外観意匠を特徴づける大きな要素であり、当該建築に祀られたシヴァ、ヴィシュヌ等のヒンドゥーの神々を象徴する形状を有する。(2)チョク建築においては、ガジューはムール・チョクにのみ認められる。 なお、ガジューとチャイティアの類例比較の観点から、仏教僧院および水場内に現存するチャイティアの遺構を収集した。
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