◆今年度は、本研究のまとめの1年であり、これまで作成してきた作品リストをもとに、「あめりか屋」の作品分析を行った。また、遺構調査として「あめりか屋」の作品の存在を把握できる資料として知られる『日本近代建築総覧』に掲載されている作品の現存の有無の確認を行った。以下、具体的な内容について述べる。 (1)住宅作品の分析 ・これまで行ってきた「あめりか屋」の作品リストをもとに、住宅作品の外部意匠に注目し、外壁の仕様による分析、屋根形式・屋根勾配による分析、窓形式による分析など線前期の住宅の変容過程を様式的な変容という観点から分析を試みた。 ・上記の分析は、「あめりか屋」の住宅作品全般にわたる分析であるが、一方、こうした住宅の変遷を地域的な観点から見るため、旧東京市を中心とした関東と京都・大阪を中心とした関西に大別し、それらの住宅の規模・外部意匠の変化をそれぞれ分析し、その差異を検討した。くわえて、戦前期のこうした中流層の住宅の施主に注目し、どのような収入の人々であったのかの分析を試みた。 (2)遺構調査 ・『日本近代建築総覧』掲載の「あめりか屋」の設計・施工、あるいは、施工の建物の現存の有無を確認した。およそ20年前のリストであることもあって、半数のものが消失していることが明らかとなった。 ・なお、現存する遺構の実測調査はなかなか許可が得られず、計画していた図面化はなかなか進展しなかった。 以上である。これらの成果は、報告書として提出したい。
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