本研究は、わが国戦前期の都市独立住宅の形成過程に関する史的研究として、明治42(1909)年の創立以後昭和18(1943)年まで、わが国の中流向けの都市独立住宅の提案とその建設を積極的に推し進めてきた住宅専門会社「あめりか屋」の作品分析を行し、その変容の過程を明らかにしようとするものである。具体的には、戦前期の主要建築系雑誌を資料として「あめりか屋」の作品を収集し、そのデータベース化を試み、次に、このデータをもとに作品分析を行った。分析にあたっては、新しい視点としてこれまでほとんど行われてこなかった外部意匠の変化に注目し、その変容過程の分析を行った。また、全国的な建設地の動向とともに旧東京市に建設された作品については、その建設地の動向、規模の動向、施主の学歴・収入の特性などを明らかにした。 その結果、外部意匠の変化の過程を外壁の仕様に注目してみれば、「1階下見板・2階塗壁」のものから「1・2階とも塗壁」のものの二つの形式に大別されること、時期的には大正11(1922)年から大正14(1925)年を境に「1階下見板・2階塗壁」から「1・2階とも塗壁」へと大きく変化していくこと、それらは様式的には「バンガロー様式」から「スパニッシュ様式」への変化と捉えることができること、そして、そこには一貫してアメリカ住宅の強い影響を見ることができること、などが明らかとなった。このことは、わが国戦前期の都市独立住宅がアメリカ住宅をモデルに形成されていたことを示唆するものであり、同時にわが国近代住宅史の新たな課題としてアメリカ住宅との比較・検討の必要性をも示唆するものと考えられる。
|