研究概要 |
本研究の目的は、X線の全反射を利用する薄膜構造解析法に異常分散効果を積極的に取り入れた全反射X線異常散乱法を用いて、CD-RWに代表される相変化記録材料の結晶-非晶質間の可逆的な構造変化を精密に解析することである。膜材料の結晶-非晶質の相変化に伴う反射率変化を利用する相変化記録材料は、デジタル情報の蓄積媒体として注目を集め、既に商品化されている。一方、今後更に膨大化・高度化が進むであろう情報化社会にあって、情報記録媒体の大容量化、高速化、高信頼性が常に材料開発の大きな目標とされるが、この傾向が強まるほど記録材料の構造制御が,その特性に大きく影響することが予想される。したがって,これらの分野を着実に発展させるためには,相変化記録材料の高品質化のキーとなる結晶状態(消去)と非晶質状態(記録)の構造を原子レベルで正確に把握することが極めて重要になっている。しかし、例えばAg-In-Sb-Te系相変化記録材料の構造を研究対象とする場合、原子番号が近接するAg, In, Sb, Teの識別は難しい。この研究隘路を克服し得る手段として、各元素に固有な吸収端近傍で生ずる異常分散現象を利用すれば、各元素を誠別して原子レベルの構造情報を直接的に得ることが可能となる。平成12年度は、Ag-Br-Ge-0系非晶質を対象として、BrおよびGeK吸収端近傍でのX線異常散乱測定を実施し、BrおよびGeの周りの局所構造解析を行って、非晶質相に対するX線異常散乱法の有効性を確かめた。平成13年度は、従来の角度分散型では保護膜層でのX線の大きな吸収のため困難であった保護層/記録層海面でのX線反射率測定を可能とするエネルギー分散型測定法を用いて、多層膜界面の遷移領域構造について新しい知見を得ることができ、本手法の有効性を示した。
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