研究概要 |
低濃度のイットリアを含むジルコニアは高温より急冷することにより室温で準安定な正方晶相が得られる.この準安定な正方晶相はサブゼロ冷却によりバースト的にマルテンサイト変態を起こす.この特異なマルテンサイト変態挙動を明らかにするのが本研究の目的である. 1.微細球状試料作製法の改善 熱伝導率が著しく低いジルコニア試料を過大な熱応力を生じさせずに急冷するためには,微細な球状試料が適している.従来,油中造粒法で直径数百ミクロンの球状試料を作製していたが,今回の実験過程において,この方法で作製した試料内部には空孔や組成の不均一が存在することが明らかとなった.従って,今年度の実験は良質な球状試料作成法の開発することより開始した.所定のイットリア濃度に配合したジルコニア粉末をボールミルにより十分混合したのち乾燥し,一軸圧縮成型により厚さ1mmの板を成形した.この板より約1mmの立方体を切りだし,内面にエメリー紙を貼りつけた回転式造粒期で球状に成形し,その後1450℃で焼結を行った.この方法により緻密で均一組成分布の良好な試料が得られた. 2.Ms温度に及ぼす組成・結晶粒径.試料サイズの影響 Ms温度は試料がバースト変態のショックにより飛び出す瞬間をその時点の温度と共にビデオに記録することにより0.1℃の精度で読みとることが可能であった.今回作製した試料のMs温度のばらつきは±数度の範囲であり,このばらつきは試料中のエンブリオサイズの分布に対応していると考えられる.また,Ms温度の組成や結晶粒径に対する依存性も顕著に現れており,これらの依存性を系統的に収集・解析することにより,ジルコニアのマルテンサイト変態の核形成機構に関する有用な地検が得られることが期待できる.
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