研究概要 |
本研究では,強加工された鉄系合金結晶中のメゾスケール・テクスチャーの解明を目指し,広い観察視野での転位集団分布の変化とその結晶方位変化の様相を,透過電子顕微鏡法等を用いて解析した.とくにここでは強加工された鉄系合金結晶(310Sステンレス鋼並びにFe-Si合金結晶)の中で発達したメゾスケール・テクスチャー(数10〜数100μmに及ぶ転位集団組織の変化とそれに伴う結晶方位変化)に焦点をあて,研究を行った.研究実績の具体的概要は以下の通りである. (1)310Sステンレス鋼において特に剪断帯,変形双晶等の不均質なメゾ構造の形成過程を透過電顕法で明らかにした.結晶粒内には剪断帯と呼ばれる不均質変形組織が多く形成され,その内部にはサブミクロンの微細粒組織が形成されている.また,結晶粒界に沿っても同様の微細粒組織の形成を新たに見い出された.これらは,暗視野法を用いることによっても確認された.以上のような微細粒組織は加工とともに拡張・発達していき,材料の全体的な微細粒構造が形成されていく. (2){111}<112>並びに{001}<110>初期方位を有する2種類のFe-Si合金結晶試片に強加工を施し,形成された転位集団構造とそれに伴う方位分布変化を,透過電顕法を用いて比較観察した{111}<112>結晶ではラメラー構造を有する加工硬化の著しい組織が発達し,さらに剪断帯の形成も見られる.それに対し,{001}<110>では,比較的転位密度の低い転位セルの形成が見られるだけで,加工硬化は小さい.これら転位構造の違いは,その後の再結晶挙動の相違と直接関連することも新たに指摘した.
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