研究概要 |
一軸応力と磁場印加は方向性を持った外力であるのに対し,温度低下と静水圧印加は等方的な外力である.それらの外力を負荷してマルテンサイト変態が起きるとき,生成するマルテンサイト晶のバリアント配向性は方向性を持った外力であるか,等方的な外力であるかによって大きく異なるはずである.すなわち,一軸応力あるいは磁場を印加したときは印加方向に平行なバリアントが選択的に生成し,温度低下と静水圧を印加したときにはその選択性は無くなる.このバリアントの配向性および塑性変形時のテイラー則によって,マルテンサイト晶内の格子不変変形も外力の影響を受けるはずである. マルテンサイト晶のバリアント配向性と格子不変変形の系に及ぼすそのような外力効果を明らかにすることが本研究の最終目的であるが,本年度は非等温マルテンサイト変態するFe-Ni合金を試料とし,それをMs点以下の温度へ冷却したり,Ms点以上の温度で一軸応力あるいは磁場を印加して,それぞれ熱誘起,応力誘起および磁場誘起マルテンサイト変態を起こさせ,マルテンサイト晶のバリアント配向性および内部の格子不変変形をそれぞれ光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡によって観察した. その結果,熱誘起マルテンサイト晶のバリアントには選択性が無いのに対し,応力誘起および磁場誘起のマルテンサイト晶のそれは外力印加方向に平行に選択的に生成していた.これらは予測された結果であるが,同一試料について確認することができた.マルテンサイト晶内部の格子不変変形にもバリアント配向性に応じた違いが観察されたが,どのように違うかを断定できるまでには至っていない.次年度にはより多くの実験を重ねることによって明確にする予定である.
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