研究概要 |
酸化物半導体として前年度までに薄膜トランジスタ特性が得られた酸化亜鉛および二酸化チタンに注目し,溶液法による新しい製膜方法を開発することによって高度に配向した薄膜を得るための実験を行った。 これまでは亜鉛やチタンの溶液を調製する場合にエタノールアミン類のみを用いてきた。エタノールアミンは窒素による強力な配位力と比較的高い沸点に特徴がある。そこで酸素を通してのより弱い配位とエタノールアミンより低い沸点を有するα-ヒドロキシケトン類を用いた溶液調整を行った。用いたα-ヒドロキシケトンはアセトール(CH_3-CO-CH_2OH)およびアセトイン(CH_3-CO-CHOH-CH_3)等である。これらの試薬を用いることでチタン,亜鉛ともそれぞれアルコキシド,酢酸塩から溶液が調整できた。特にチタンイソプロポキシドを原料とし,これらとモノエタノールアミンを同時に用いることで水溶液のチタン酸水溶液も調整できた。これらの溶液を用い,それぞれ二酸化チタン(アナターゼ),酸化亜鉛薄膜がコーティングできた。 酸化亜鉛薄膜に関しては,モノエタノールアミンを添加したイソプロパノール溶液からはc面に配向した薄膜が得られること,さらにアセトインとモノエタノールアミンを同時に添加することで非常に強くc面配向した薄膜が得られることを明かにした。この薄膜についてAFM,TEM等で構造を観察した。 c面配向した酸化亜鉛薄膜は他の方法で作成した無配向薄膜に比べて電気伝導度が二桁程度高いこと,熱酸化シリカ層を有するシリコンウェハー上に作製したボトムゲートタイプの薄膜トランジスタはスイッチング比が無配向膜より優れていること,また200℃程度の温度までトランジスタ特性が得られることが明かとなった。
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