研究概要 |
チタンテトライソプロポキシド、酢酸亜鉛、酢酸ニッケルを原料とし、エタノールアミンを添加してこれらをイソプロパノールに溶解・安定化させた。この溶液を用いて、ガラス基板上にディップ法でコーティングを行った。さらにこれを乾燥・熱処理することで、酸化物膜として得た。得られた薄膜は酸化ニッケル薄膜を除いて無色、透明であった。酸化ニッケル薄膜は若干着色していたが、透明であった。 基板としてITOをスパッタしてある耐熱ガラス上に酸化チタン、酸化ニッケルをこの順で積層して作製し、酸化ニッケル上に金電極を蒸着して電流電圧特性を測定すると、順方向で電流値が増加する整流特性が得られた。この整流特性は測定温度を300℃まで上げても得られ、ワイドバンドギャップ酸化物半導体の透明性、高温特性に優れたp-n接触多層薄膜を得ることができた。 エタノールアミンより低い沸点を有するα-ヒドロキシケトン類であるアセトール(CH_3-CO-CH_2OH)およびアセトイン(CH_3-CO-CHOH-CH_3)を用いることでチタン,亜鉛ともそれぞれアルコキシド,酢酸塩から溶液が調整できた。特にチタンイソプロポキシドを原料とし,これらとモノエタノールアミンを同時に用いることで水溶液のチタン酸水溶液も調整できた。これらの溶液を用い,それぞれ二酸化チタン(アナターゼ),酸化亜鉛薄膜がコーティングできた。 モノエタノールアミンを添加したイソプロパノール溶液からはc面に配向したZnO薄膜が得られること,さらにアセトインとモノエタノールアミンを同時に添加することで非常に強くc面配向したZnO薄膜が得られることを明かにした。 c面配向した酸化亜鉛薄膜は他の方法で作成した無配向薄膜に比べて電気伝導度が二桁程度高いこと,熱酸化シリカ層を有するシリコンウェハー上に作製したボトムゲートタイプの薄膜トランジスタはスイッチング比が無配向膜より優れていること,また200℃程度の温度までトランジスタ特性が得られることが明かとなった。
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