研究概要 |
本研究は情報化社会に欠くことの出来ない電子材料用セラミックスの新規な水系製造プロセス開発の基礎研究として位置づけられるもので,具体的には低環境負荷型セラミックス製造プロセスの設計指針を提案することを目的としている.対象とするセラミックスはアルミナおよびチタン酸バリウムで,1)分散性制御の際に重要な因子となる粒子表面特性の評価法として電位差滴定法を,2)製品としての薄膜特性やスラリーの粘性制御に必要な情報となるスラリー中の粒度分布の評価法に超音波減衰分光法を、それぞれ用いている点が本研究の最大の特徴である。とくに後者の超音波減衰分光法は実際の製造プロセスと同じ粒度濃度である高粒子濃度系のまま希釈することなしに粒度分布が測定できる新しい手法で,このようなプロセス開発の研究に本手法が用いられて成果が公表されるのは世界的にも例がなく、多くの新規な知見が得られた画期的な試みであると自負している.いかに平成12〜13年度に行った研究により得られた成果を箇条書きに示す. 1.アルミナ微粒子の特性評価…アルミナ基盤用の原料には微量のアルカリ土類金属が含まれているが,元々表面に存在水酸基の量とそれらの酸・塩基的性質、さらには表面に存在するアルカリ土類等の微量元素が分散性に与える影響を明らかにする事が出来た.また,その際用いた電位差滴定法はロット間の微小な差を区別する方法としても活用できることが明らかとなった. 2.チタン酸バリウム微粒子の表面特性評価…チタン酸バリウムから溶出するバリウムイオンのpH依存性や分散剤添加量依存性を明らかにする事が出来た.その結果,粒子の分散性を維持しつつバリウムイオンの溶出を抑えることの可能な添加量は微粒子表面を半分程度分散剤高分子が覆っている条件であることが分かった(申請費で購入した原子吸光分光光度計の活用による成果).また、粒子の分散性の指標としてよく測定されるゼーター電位や等電点の測定方法には誤りがあることが判明した。上記の分散剤の影響に関する研究は、この測定法の誤りを考慮したもので、今後のこの分野の研究に対してひとつの重要な方向性を示すものと思われる。 3.非水系溶媒から水系溶媒に転換して行く際に問題となるのが,バリウムイオンなどのアルカリ土類金属イオンの溶出を抑えながら,微粒子を解逅・分散する技術の指針確立である.本研究では超音波減衰分光法を用いることでin situで分散性を評価でき結果,スラリーの粘性は粒度分布とあまり関係がなく,粒子表面の分散剤高分子のコンフォメーションに注目すれば良い事が判明した.このことから上記問題点である指針の確立も基本的には微粒子表面の高分子のコンフォメーション制御に注目すれば良いことと結論づけられた.今年度は複数種の分散剤高分子を用いて試験を行ったが,カルボキシル基のような微粒子表面にアンカーを下ろす官能基の数がコンフォメーションを制御する因子の1つである事が分かった.
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