本研究では、ディッピングによる含浸法を用いて、C/Cコンポジットの表面にホウ化物セラミックスを被膜し、優れた耐酸化性能を付与することの可能性を探ることを目的とした。この方法の特徴として、C/Cコンポジットを直接溶液に含浸させるため、複雑な形状物にも適用できる点などがある。ホウ化物は、高温酸化時にB_2O_3の酸化生成物を形成し、優れた酸化保護膜になり得ることが期待できる。そこで、実験用のC/Cコンポジットに、市販の日本カーボン製CCM-190Cを用いた。試料のC/Cコンポジットは、ダイヤモンドカッターを用いて5×10×5mmのサイズに切り出し、アセトン中で30min超音波洗浄を行った。この試料にSiB_6を被膜するために、トリエチレングリコール中にSiB_6粉末を分散させ含浸法により行った。含浸に用いたSiB_6粉末は純度99%、平均粒径3μmのものを用いた。得られた試料から分散媒であるトリエチレングリコールをほぼ完全に蒸発させるために、623Kで脱脂処理を施した。これにより、C/Cコンポジットは、SiB_6量が試料全質量の約3mass%で、試料全表面にほぼ100%SiB_6を被覆することができた。C/Cコンポジットの耐酸化性評価のために、昇温酸化実験および定温酸化実験を行った。酸化実験は、高温電気炉を用いて、昇温速度10K/minで、室温から1273Kの条件で行った。その結果、SiB_6被覆C/Cコンポジット試料の方か、未処理のC/Cコンポジットに比べて、優れた耐酸化性を有することが分かった。さらに、得られた試料の分析結果から、SiB_6の酸化生成物である、SiO_2およびB_2O_3が、C/Cコンポジットに耐酸化性を付与していると考えられる。そして、未処理のC/Cコンポジットおよび含浸法により3mass%のSiB_6を被覆させた試料の定温酸化に伴う質量変化の割合は、酸化温度および酸化時間の増加に伴って減少する傾向を認めた。減少の割合は、高温になるにつれて大きくなり、1000K以上でその傾向が顕著に認められた。 このことから、SiB_6を含浸させたC/Cコンポジット試料は、良好な耐酸化性を有することが明らかになった。
|