研究概要 |
酸化カルシウム,酸化マグネシウム及び酸化亜鉛などのセラミックス粉末を用いて,暗所における抗菌活性を測定し,粉末の粒子径,化学組成及び結晶性が抗菌活性に及ぼす影響を調べた.その結果,酸化亜鉛の抗菌活性の増大は結晶性に影響されず,粉末の比表面積すなわち粒子径の増大に伴って増大することが分かった.この抗菌活性の発現は,酸化亜鉛粉末表面から発生する過酸化水素によることが明らかとなった.また,大腸菌と黄色ブドウ球菌を比較したところ,黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性の方が強く現れた.酸化カルシウム及び酸化マグネシウム粉末を用いた場合にも,強い抗菌活性が見出され,その発現は粉末表面から派生するスーパーオキシド及び細菌の増殖環境下のpHの増大によることが分かった.この場合には,大腸菌及び黄色ブドウ球菌ともにほぼ同一の抗菌活性を示した.酸化マグネシウムに酸化亜鉛を固溶した粉末の場合には,酸化亜鉛の固溶量の増加に伴い抗菌活性は低下した.この理由は,酸化亜鉛の増加により酸化亜鉛より強い抗菌活性をもつ酸化マグネシウムの量が少なくなることに起因していることが示唆された.この抗菌活性の低下傾向は,これら粉末の混合した粉末の場合と同一であった.酸化カルシウム及び酸化マグネシウムの混合粉末の場合では,酸化マグネシウム量の増加に伴い抗菌活性は低下した.酸化カルシウムと酸化マグネシウムの抗菌活性を比較したところ,酸化カルシウムの方が強いことが明らかとなったので,この混合粉末の場合の結果は,抗菌活性の強い方のセラミックス粉末の量に抗菌活性の増減が律速化されることを意味していると考えられた.
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