研究概要 |
亜鉛及びマグネシウムイオン交換樹脂を種々の温度で炭素化することにより,酸化亜鉛及び酸化マグネシウム超微粒子分散炭素球を合成し,炭素化温度の増加に伴う含有微粒子の量及び抗菌活性を調べた.得られた炭素球中の酸化亜鉛及び酸化マグネシウムの量は,炭素化温度の増加に伴い減少した.これは,炭素化温度の増加によりイオン交換樹脂中の金属イオンあるいは酸化物が還元されたことによる金属が蒸発したためと考えられた.しかし,比表面積は炭素化温度の増加に伴い増大した.この理由は,低温で炭素化されたイオン交換樹脂には,未分解有機物が多く含まれており,炭素化温度の増加に伴いその有機物が燃焼したことによるガスの発生に起因していると考えられた.炭素球中の酸化物の分布を調べたところ,その分布は均一であり,分散した酸化物はナノサイズであることが分かった.また,酸化物分散炭素球は,菌種を問わず,多量の細菌を吸着することが分かった.暗所における抗菌活性を調べた結果,酸化マグネシウム分散炭素球は大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対して強い抗菌活性を示し,抗菌活性は炭素化温度の増加に伴い低下した.培地のpH値を測定した結果,抗菌活性の発現はpHによるもので無く,炭素球中の酸化マグネシウムから発生したスーパーオキシドによると考えられた.酸化亜鉛分散炭素球の場合も,抗菌活性は炭素化温度の増加に伴い低下した.この試料から発生する活性酸素量を調べたところ,活性酸素の量は低温度で炭素化した試料ほど多かった.また,pH値は弱酸性を示したが,細菌の増殖抑制効果を与えるpH値でなかったことから,抗菌活性の発現は炭素球中に分散した酸化亜鉛の表面から発生した活性酸素によることが分かった.
|