研究概要 |
ポリビニルピロリドン(PVP)を含有する金属アルコキシド溶液あるいは金属硝酸塩溶液をコーティング液とし,スピンコーティングあるいはディップコーティングによってシリカガラス基板上に種々のセラミック薄膜を作製した。ゲル膜のデポジットと焼成(700℃,10min)は1回だけとした。その結果,1回のコーティング操作によって亀裂の発生を伴うことなく達成しうる最大の膜厚(限界厚さ)は,溶液へのPVPの導入によって著しく増大し,BaTiO_3膜においてはモル比PVP/Ti(OC_3H_7^i)_4=0.5,Fe_2O_3膜においてはモル比PVP/Fe(NO_3)_3=0.5,また,PZT膜においてはモル比PVP/(Ti(OC_3H_7^i)_4+Zr(OC_3H_7^n)_4)=1付近で限界厚さが最大となり,それぞれ最大膜厚2μm,0.8μm,2μmが達成された。得られた膜には透光性が見られたが,電子顕微鏡観察の結果,多孔質であることがわかった。BaTiO_3膜に関しては,熱処理を低温から300℃,500℃,700℃というように段階的に行うことによって緻密化を図ることができ,段階的熱処理によって膜厚が減少するとともに透光性が著しく増大した。一方,PZT膜に関しては,段階的熱処理を行うことによって透光性はむしろ減少し,電子顕微鏡観察の結果,段階的熱処理が微細な亀裂の発生を誘起することがわかった。PZT膜に関しては,ゲル膜を700℃で焼成して作製した厚さ1.7μmのPZT膜にはP-Eヒステリシスが認められ,残留分極と抗電場はそれぞれ6μCcm^<-2> and 90kVcm^<-1>であった。
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