本研究ではコラーゲンの10倍〜100倍の圧電定数を持つ無機粒子を分散した複合水酸アパタイトセラミックスを合成し、応力が加わったときに微小な電流を生ずる機能性バイオセラミックスの開発を検討した。この3年間の研究実績をまとめると以下のようになる。 1.強誘電体(チタン酸バリウム)粒子と水酸アパタイト粒子をそれぞれオートクレーブで合成し、種々の温度で強誘電体粒子と水酸アパタイトの間の反応性を明らかにした。 2.チタン酸バリウム粒子を水酸アパタイト母相に分散したコンポジットセラミックスを焼結し、800℃以下で合成し、微構造・相・組成について検討した。チタン酸バリウムの粒径を変化させ、その際の緻密化挙動・反応性そして電気的性質を測定した。 3.空気中で、ダイヤモンド圧子押し込みに法により応力印加をした際に発生する電気信号の解析を行い、機械信号から電気信号への変換メカニズムを分散粒子の電気機械物性の観点から明らかにした。 4.チタン酸バリウムセラミックスと水酸アパタイトセラミックスをそれぞれ別個に合成し、さらにそれを高温で張り合わせた層状構造を作成した。界面における反応等を詳細に検討した。 5.擬似体液中にコンポジットを浸漬し、その周囲に生成したアパタイト相(人工骨に近似的に相当)の状態観察から生体活性を問接的に評価した。 6.擬似体液中でダイヤモンド圧子押し込みに法により応力印加をした際に発生する電気信号の解析を行い、神経回路接続を仮定したときの電気信号の減衰挙動を検討した。 このうち4.層状構造と6.神経回路接続に関する研究は現在、続行中である。
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