強磁場を印加した熱CVD法を用いて高配向鉄膜を作製する目的から、本研究室に現有する最高2T(均一磁場領域0.5T)の電磁石を援用した磁場印加CVD装置の作製を行い、反応装置の基礎的特性(温度分布等)の確認を行った。この目的のために、本補助金より装置工作に要する配管材料、電気部品等を購入した。始めに磁場を印加しない状態において以下反応による鉄膜の析出条件を検討した。 2FeCl_3(g)+3H_2(g)=2Fe(s)+6HCl(g) 本系においては、条件によってFeCl_2粒子の析出が生じる場合があり、鉄膜の析出条件は、基板温度、ガス流量や反応器形状に大きく依存することが分かった。既に析出条件を設定することができたため、同装置を用いて磁場を印加し、鉄膜の作製を行った。磁場印加により、膜のモルフォロジーに大きな変化が生じていることを確認した。現在膜結晶配向のX線法や電子線回折法による評価手段の精度に関し、検討を行っている。 また磁場が及ぼすガス流動や成膜速度への影響に関しても調査を行っており、今後、膜結晶配向、粒構造等の結果との接点を探っていく予定である。 次の段階として、本学金属材料研究所超伝導強磁場実験施設に設備されている超伝導磁石(最高6T)を用いて、CVD成膜を行う計画を立てており、施設における実験日程の調整を行っている。また同装置に組み込む反応器等の設計が終了している。本補助金の一部は同装置作製のための材料費購入にも使用した。この装置の完成によって、更に強力な磁場印加が可能であり、鉄膜結晶配向に対する磁場印加効果に関する詳細な検討が可能になると期待している。
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