「連続繰り返し曲げ加工(Continuous Cyclic Bending;CCB)」は、板材表面を強加工、内部を低加工し得る新しい加工プロセスであり、その後の熱処理を組み合わせることにより意図的に表面と内部に異なった組織に制御できる。本研究では、CCBとその後の熱処理により、Al-Mg系合金の板材表面において先鋭化される「立方体方位」の形成機構およびその最適な加工・熱処理条件を明らかにすることを目的としている。今年度得られた成果は、以下のようにまとめられる。 (1)圧延後焼鈍した受入材は、表面層、中間層、中心層いずれも弱い立方体集合組織を示した。50パスのCCBにより、特に表面において立方体方位が幾分先鋭化されることが分かった。この加工材をソルトバス中で3.6ks焼鈍した結果、さらに表面の立方体方位は先鋭化され典型的な立方体集合組織を呈した。 (2)20パスCCB/ソルトバス焼鈍材の表面層では、50パス材同様に立方体方位が発達したのに対し、Ar焼鈍材および大気焼鈍材では、ランダムな集合組織を呈し、立方体集合組織が消失した。 (3)20パスCCB/大気焼鈍材の中間層では組織に大きな変化は見られなかったが、ソルトバス焼鈍材の中間層では一部に100μm以上の粗大結晶粒が形成され50%を占めた混粒組織を呈した。また、両焼鈍材ともに中心層の組織には大きな変化は見られなかった。 (4)50パスCCB/大気焼鈍材およびソルトバス焼鈍材の中間層では100μm以上の粗大結晶粒が90%以上を占めた混粒組織を呈した。また、両焼鈍材ともに中心層の組織には大きな変化は見られなかった。 (5)50パスCCB後熱処理し強い立方体方位が形成された板材に、再度50パスCCBを施し熱処理することを試みた結果、再CCB熱処理材の立方体方位の割合は増加しており、CCB+熱処理プロセスの繰り返しによりさらなる先鋭化が可能であることが明らかとなった。
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