本年度は、約60ナノメートルのマグネタイトと20ナノメートルのα-鉄がラメラー状に積層した複合粒子およびセル構造粒子を作製し、その組織/構造と磁性を検討した。 (1)単相ウスタイトの作製; 純鉄粉とマグネタイト粉をメカニカルアロイングしたのち900℃で熱処理してウスタイト単相化し、その後空冷することによって、ウスタイト単相の粉体を得た。結晶構造の大きな違いから、空冷程度でもウスタイト単相が凍結されることが判った。また、その結晶構造と磁性を、X線回折と磁化測定、メスバウアー分光によって検討した。 (2)ウスタイトの分解による鉄/マグネタイト複合粒子の作製; 上記ウスタイト粒子を低温で熱処理することによって、(FeO→Fe+Fe_3O_4)な反応によって、鉄とマグネタイトからなる複合粒子を作製した。電子顕微鏡による組織観察から、この粒子は、ミクロンレベルの粒子自体がさらにラメラー状の約60ナノメートルのマグネタイトと20ナノメートルのα-鉄からなる粒子であること判った。磁化測定とメスバウアー分光の測定をおこなったが、期待していた超常磁性は認められなかった。 (3)鉄成分のエッチングによるセル構造マグネタイト粒子の作製; 上記複合粒子を、硝酸アルコールを用いて鉄成分を選択的にエッチング除去して、マグネタイトのセル構造粒子を得ることができた。 (4)バルク磁性体と触媒への展開; 上記結果から、(鉄+マグネタイト)の熱処理によって、(1)バルクウスタイト、(2)バルク複合体、(3)バルクセル構造体が得られることがわかった。
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