初年度に鉄酸化物系における複合粒子およびセル構造粒子の作製・評価を行ない、2年度にコバルト酸化物とニッケル酸化物における複合粒子形成の可能性を探索した。 (1)単相ウスタイトの作製;純鉄粉とマグネタイト粉をメカニカルアロイングした後ウスタイトの単相領域である900℃で熱処理し、その後空冷することによってウスタイト単相の粉体を作製することができた。ウスタイトと安定相の結晶構造の大きな違いから、空冷程度でもウスタイト構造が凍結されることがわかった。 (2)ウスタイトの分解によるα鉄/マグネタイト複合粒子の作製;ウスタイト粒子を低温で熱処理することによって、α-鉄とマグネタイトからなる複合粒子を作製することができた。電顕観察から、この粒子は、粒子径が数十ミクロンであり、20ナノメートルのα鉄と60ミクロンのマグネタイトで構成された複合粒子であることが判った。飽和磁化は96emu/gであり室温で強磁性であったが、超常磁性は観測されなかった。 (3)鉄成分の選択エッチングによるセル構造マグネタイト粒子の作製;上記複合粒子を、硝酸アルコールを用いて鉄成分を選択的にエッチング除去して、セル構造のマグネタイト粒子を作製することができた。 (4)コバルト酸化物/ニッケル酸化物系における複合粒子作製の探索;コバルトウスタイト(CoO)とニッケルウスタイト(NiO)を作製し、熱分解によって上記と同様の複合粒子の作製を試みた。600℃以下の熱処理では分解反応は不可能であり、鉄系と異なり両ウスタイトの安定性が高いことが示された。
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