結晶粒を微細化することによって、高強度の材料が得られることや超塑性が期待できることから、超微結晶(UFG)材料への関心が高まっている。UFG材料の作製はECAE(Equal-Channel Angular Extrusion)法やTS(Torsion Straining)法など、材料に強加工を加えることで実現している。本研究では構造用材料として利用範囲の広いAl-Mg合金を基本として、結晶粒の成長抑制と微視的組織の安定化のためにScを少量添加したAl-Mg-Sc合金にTS加工を施した。TS法の加工条件を加工温度一定(20℃)でねじり回数を1、3、5、7、10と変化させた場合と、ねじり回数を一定(5回)とし、加工温度を20℃、200℃、400℃と変化させ、得られた試料について硬さ特性および組織の調査を行なった。得られた成果は以下の通りである。 1.室温でTS加工した場合、試料の中央部より外周部のHvの値は高かった。また加工前の平均微小硬さはHvで120程度であったが、室温で加工した場合、Hvは200以上になった。さらにねじり回数を増加させるとHvは増加した。 2.ねじり回数が一定の場合は、加工温度の上昇とともにHvは低下した。またこの場合は試料の外周部と中央部とでHvの差は無かった。 3.TS加工前の集合組織は典型的な圧延集合組織であったが、TS加工を施すことによって圧延集合組織は消滅し、新たに強い(111)+(200)集合組織を形成した。 4.20℃で加工した試料の平均結晶粒径は、約90nmと微細化し、結晶粒界は不鮮明であった。一方、加工温度を上昇させると結晶粒界が鮮明になり、加工温度400℃では明らかに結晶粒が粗大化していた。これは動的再結晶した後、粗大化したものと推察される。
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