研究概要 |
結晶粒を微細化することで,高強度の材料が得られることや,超塑性が期待できる。中でも最近注目を集めているのがECAP(Equal Channel Angular Pressing)法による微結晶製造技術である。本手法により,サブミクロンオーダーの結晶粒径を持つバルク状の大型素材が得られる。しかし,欠点として延性の低下や,結晶粒界が非平衡組織であるため熱的に不安定などいくつかの問題点も残されている。 本研究では構造用材料として利用範囲の広いAl-Mg合金を基本とし,上に述べた欠点を改善させるため,ScとZrを微少量添加することにした。これらの元素は再結晶抑制効果をはじめ、溶接性や耐食性を改善することで知られている。なお,同種の合金にECAP法を適用して微結晶化した材料について機械的特性に関する研究がなされているが,疲労特性についてはほとんど不明のままである。 本研究では,0.2%以下のScとZrを含むAl-Mg合金にECAP加工を施した微細結晶粒材料について,疲労特性を中心とした機械的特性の調査を行った。さらに,熱的安定性の評価も行った。なお,ScとZrを含まないAl-Mg系合金の代表として、5056アルミニウム合金を用い、比較検討を行った。 その結果,以下の結言が得られた。 (1)平均結晶粒径は約0.3μmであった。 (2)耐力はMg濃度に依存して増加しており、伸びはA5056合金の2倍であった。 (3)高サイクル疲労試験による疲労限は120MPa以上あった。 (4)773Kまでの熱的安定性はきわめて優れていた。
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