研究概要 |
1)ポリマーマトリックス中でのビオロゲンホスホン酸塩の発色挙動 溶液中でのビオロゲンの光還元は媒体からの電子供与が主であることが明らかになった。固相での発色挙動を検討する為、イオン化ポテンシャル(Ip)の異なるポリマー中での1-アルキル-1'-メチル-4,4'-ビピリジウムホスホン酸塩のフォトクロミズムを検討した。電子供与性の大きいポリ(N-メチルピロリドン)中ではIpの高いPVA等よりも発色量は大きく、媒体からの電子移動が大きいことが示唆された。しかし、電子供与性のないポリ塩化ビニル(PVC)中でも発色が確認され、対アニオンのホスホン酸からも電子移動が起こり、ガラスサンドイッチにし無酸素状態でのフィルム可逆性が大きいことが明かとなった。 2)ビオロゲンホスホン酸塩ラジカルカチオンの二色性 ビピリジウムジカチオンへのホスホン酸イオンの結合力は小さく、融点以下でホスホン酸塩は分解する。発色種の融点を下げる為、長鎖アルキルホスホン酸を加えた系での光還元を検討した。N-アルキル鎖が長いビオロゲンのラジカルカチオンは通常の600nmの吸収に加えて、ラジカルが二量化した530nmの吸収が大きくなり二色性を示したフィルムの溶融により、分子の配向を変化させるには、アルキルホスホン酸を過剰に加える必要があった。しかし系が酸性に傾よると、プロトンを生成する光還元反応(発色)が低下し、二色性フォトクロミズムを示すビオロゲンホスホン酸塩には中性のホスホン酸エステルの添加が必要であった。
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