研究概要 |
Ti_<50>Pd_XNi_<50-X>合金は室温近傍で優れた形状記憶特性を有するTiNi合金と高温形状記憶合金として期待されているTiPd合金の両者の特徴を併せ持つ形状記憶合金として注目されている.申請者はPd,Ni過剰組成のTiPdNi合金においてこれまでに報告されていない析出相が生成することを見出した.そこで本研究では、この新しい析出相を利用したTiPdNi合金の組織制御と高機能化について調査し、150〜400℃の温度範囲で良好な特性を示す形状記憶合金の開発を目指す. 以上の目的に沿って現段階で得らている研究の成果は以下の通りである. 1)Pd,Ni過剰TiPdNi合金における新しい析出相は、溶体化処理(ST)温度から急冷し示差走査熱量分析(DSC)を行うと400℃近傍で鋭い発熱ピークを伴って生成し、450〜550℃の範囲で吸熱反応を示し消滅するが、時効材では消滅に伴う吸熱反応のみが現れることが知られた. 2)析出相の形態はNi基超合金のγ'析出相と類似し、良好な析出強化が期待され、この析出相を利用して二方向特性が得られることを確認した.構造は解析中であるが、B2母相の1/8(111)^*回折斑点を示す長周期積層構造を有する3元系合金固有の析出相である. 3)析出相の組成に対応するTi_<45>Pd_<55-X>Ni_X(X=10〜30合金ではB2構造から上記の長周期構造へ1次転移の要素を持った規則-不規則変態を起こすことを確認した. 4)また、上記組成の合金ではNi過剰TiNi合金の強化相としてその形状記憶効果を飛躍的に改善するTi_3Ni_4相と同じ構造を持つ微細析出相が生成することが判明し、今後の組織制御への応用が期待できる.
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