研究概要 |
高温形状記憶合金として期待されているTiPdNi合金のPd, Ni過剰組成において、研究代表者が見出した新しい析出相を利用した本合金の組織制御と高機能化に関する基礎研究を実施した. 析出相の組成はTi_9(Pd,Ni)_<11>と表すことができ、三方晶構造を持つ.B2母相との方位関係は{110}_<B2>//{100}_<Ti9(Pd,Ni)11>,<111>_<B2>//<001>_<Ti9(Pd,Ni)11>である.研究の進行にともない、当初、析出相と考えていたこの相はB2母相の<111>方向に4倍周期の構造をもつ規則相であることが判明した.この根拠として、上記の方位関係より4つのバリアントが存在しそれらは不規則な形状の逆位相界面(APDB)によって分割されており、規則化温度(Tc)以下の焼き鈍しにより単一バリアントのみが優先的に成長することが知られた.さらに規則相の成長にともないマルテンサト変態が抑制され、Ms温度が室温から液体窒素温度まで低下した.この現象はTi系形状記憶合金においては初めて見出されたものであり、これまで貴金属合金系のみで議論されていた母相の規則化とマルテンサイト変態の関係に、今後、新たな知見を与えるものと期待できる.拘束時効により規則相を分散させた合金では二方向形状記憶効果が200〜400℃の間で発現することが確認できた.次に二方向特性に及ぼす熱処理の影響を種々検討したが、目的として設定したTi_3Ni_4相を分散させたNi過剰TiNi合金ほど顕著な形状変化を発現させるには至らなかった.今後の課題として、規則相の正確な結晶構造の同定およびマルテンサイト変態(母相の安定化)に及ぼす規則相の影響を明らかにする必要がある.
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